始めに

DynaRodユーザーガイド 始めに DynaRod使用法 トラブル・シューティング 目次

 

DynaRod − Dynamic Rod Deflection Simulator   

はじめに

Dynamic Deflectionとは、Static Deflectionに対応する言葉で日本語にすると「動的なタワミ」とでも言いましょうか。 要は、ロッドを動かすと、その動きの中でロッドがどのように曲がるのか、ということを言います。 

これまでEverett Garrisonという人が考案した、Static Deformation(あるいはStatic Deflection)と称する計算方法がありましたが、それは単に先端から部位までのモーメントを計算し、モーメントからストレス値を導き出し、それをタワミの代替値であるかのように扱うものでした。 いわゆる構造設計におけるストレスの計算とでもいいましょうか。 竿を曲がるものと前提せずに内部応力を計算するものでしたので、ロッドの曲がりも、材質の硬軟による曲がりやすさ/曲がりにくさ、などが考慮されておりません。 そのため、ロッドを設計するに際して、どんなロッドになるのかということがイメージしにくいという欠点がありました。

とはいえ、この方法は計算尺の時代に考案されたという点で価値があり、歴史的な意義のあるものです。 現在もこの計算方法のファンが沢山おられます。  筆者も、ロッド作りをはじめたころ恩恵にさずかりましたが、この方法にはいろいろな矛盾点を感じておりました。

まず、ストレスカーブを見てどのようなロッドなのか、ということを類推することがなかなか難しいという点でした。  ロッドと繋がらないのです。  それから、ロッドに使う竹の種類が違う場合でも、例えば、トンキン竹ではなく、真竹や破竹を使う場合でも、計算方法が同じということになってしまいます。  つまり、モーメントとストレス値の間には材質の違いという要素の入り込む余地がないのです。  あえて言えば、モーメント計算の要素である竹の重さが唯一反映されている程度です。 

 それでもなんとか分かりやすいロッドの要素を求めて、ストレス値から曲りを計算しようとすると、どうしてもGarrisonの式では曲がりを現実的に表してくれません。 変な曲り方をするのでした。

そこで筆者は、一旦、偉大なるGarrison計算式からはなれて、地道に物理の法則を辿り始めたわけです。 ロッドを曲げる要因は何なのか? ロッドは何故折れないのか?  ロッドは何故反発するのか?  考え始めると疑問だらけでした。  運動法則、速度、加速度、等加速度運動、慣性力、空気抵抗、弾性、弾性係数、質量、重力、重さ、剛性、ひずみ、タワミ、などなど、地道にコツコツと老骨に鞭打って紐解いてきました。

ここにきてやっと実用可能なシミュレータが完成しました。  ロッドに負荷を与えるにはロッドの動きを前提せねばなりません。 ロッドをどう動かすとどういう力がロッドに作用するか。  ロッドに負荷がかかるとどう曲がるか。 竹の材質をどう反映させるか。 ロッドの断面形状が違う場合はどうなるのか。 中空にしたらどう変わるか。 ロッドが曲がりながら動くと動きの中でモーメントはどう変わるか。 それは曲がりにどう反映されるか。 計算上発生する収束問題はどう解決するか。 などなど、多くの疑問点がこのシミュレータでは解決されています。

DynaRodは、以上のべたような物理法則を取り込んだだけでなく、たまたま筆者が、バンブーロッドを作る人であったため、まさにロッドの設計、製作をする上で必要な考慮点も数多く取り込んで作成されています。  

フライロッドのほかにルアーロッド、船釣り用ロッドも設計できるように工夫されていますが、フライロッド以外については必要なガイド情報をユーザーが事前に設定する必要があります。 
初期値はフライロッドと同じガイドセットが設定されています。  

使い勝手の良い汎用的な釣り竿設計ソフト、キャスティング・シミュレータ、となることを前提に今後も改良を進めてまいります。

Max Satoh        2006年1月15日

以上

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