曲り/ストレス計算

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機能

ロッド仕様、部品設計、ロッドバランスの結果と、画面上に指定された情報を前提にして、以下の計算を行います。 計算は、曲がりを考慮しながらモーメントを計算する動的計算によります。 Garrison式のStaticな計算とは計算方法が異なります。

計算の前提

ここでの計算は、次のようにロッドの動きを前提します。

キャスティングするロッドの考え方 (フライロッド、ルアーロッド)

すべての(ブランクを含む)部品重量に ロッドスピードで指定した G値 を乗じて、慣性力による水平方向のロッドモーメント、および、1G(=g)の垂直方向への重力加速度を前提にした重力によるロッドモーメントを加算して、ロッドの曲り、ストレス値を計算します。

慣性力とは、

F=ma で計算される力のことです。

mは質量、a は加速度です。

重力とは、

地球上での物の重さは次のように計算されます。 Wは日常我々が使っている単位、グラムだとかキログラム、(或いは、オンスとかポンド)の単位です。

W=mg

mは質量、g は垂直方向への重力加速度(地球の引力)です。

慣性とは、

下図の黒枠を電車だと仮定します。 
左の図は、電車の天井から糸でぶら下げられた錘です。
右の図は、電車の床に垂直に立てられて固定されているロッドです。

錘の質量=m、ロッドセクションの一部(1インチセクション)の質量=m’とします。 連続したロッドについては、分割したセクションの連続として考えます。

今、この電車が左方向に動き、黒い矢印、aの大きさの加速度(一定時間内に速度を速める働き)が電車に働きます。 

その反作用として、錘とロッドセクション各部には、-aの大きさの慣性(元の位置にとどまろうとする性質)が働きます。 

一方、錘にもロッドの各部にも、重力加速度gが働いており、mxgと、m’xgの大きさの重力がかかっています。

電車の移動による加速度は、F=-ma、F'=-m'a の大きさの慣性力(慣性によって生じた力)を錘とロッドに生じさせます。 また、重力加速度は、W=mg、W'=m'g の大きさの重力を生じさせます。

天井から下げられた錘は、横方向への-maと下方へのmgの力を受け、赤い線で示した合力として示されます。 2方向への力が合算して斜め方向への力が合成されるわけです。 (ベクトルは合成できることを学校で習いましたよね)。 そして錘は、横方向に移動し、天井からの糸は合成された力のベクトルの角度になってバランスします。

床に固定されたロッドにも同じことが言えます。 横方向への慣性力 -m'a と、垂直方向への重力、 m'g が合成されて、赤い線で示した合力が生まれます。 この力がロッドを引っ張り、ロッドを曲げる力、モーメントとして、ロッドのButt側の各部に働きます。 ロッドが糸のように真っ直ぐ斜めにならないのは、ロッドに使われる素材が、剛性を持つためです。 剛性が上部から伝わってくるモーメントに対抗し、モーメント=剛性、という図式でバランスしているために、ロッドは、曲がった状態を呈するわけです。

一方ロッドに対するモーメントは、常にロッドの軸に対して90度方向に働く力として計算する必要がありますから、さらに、合成された赤い線の力を、計算対象のロッド部の角度に対して90度になるよう、ベクトルの分解、合成をくりかえして力の大きさを計算します。 この繰り返し計算が、動的計算と言われるものです。 動的計算では、一回だけ計算すればよいのではなく、モーメント計算=>モーメントによる曲り=>曲がった角度に対するベクトル調整=>モーメント計算、という計算をくりかえします。

以上のことから、ロッドの各部に同じG値を掛けるという意味は、ロッドを垂直に立てたまま、G値の加速度で横にずらした、と同じ意味になります。 このロッドの動きは、Translated Rodとして、キャスティング方法の一つに挙げられます。

実際のロッドキャスティングでは、空気抵抗による力も考慮に入れなければなりません。 空気抵抗の大きさは、流れる空気に対するロッドの表面積に比例しますので、DynaRodでは、Dimensionに対する係数として調整しています。 竹の属性テーブルにある、Lvalueにそれが含まれます。 Lvalueはユーザーが加減できる係数です。

Boat Rod(船竿)における加速度の考え方

下図を参照してください。 水平に持ったロッドを表しています。

水平に保持し、静止したロッドの状態では、ロッドの各部に、g=1Gの重力加速度がかかっていると考えます。 G値は、重力加速度相当値としてDynaRodが導入した加速度の単位です。 横方向への加速度 a に関しては、人間が理解しやすい目安の単位(定数)がありません。 一方、重力加速度には、g=9.8m/秒^2 という目安単位(定数)があります。  宇宙においては、g も a も同じ性質の加速度ですから、a の方にも、同じ目安単位が欲しいわけです。 したがって、1G相当の加速度を表す単位を

G = a / (9.8m/秒^2) とするわけです。

Boat Rodは、水平に持っているだけなら、常に1G、つまり重力だけを考慮すれば良いわけです。

しかし、DynaRodでは、船竿といえども、上下に動かした場合の、ロッドの曲り方を知りたいという強い欲求に答えるため、逆に、重力加速度を考慮せず、いわゆる一般加速度(aの加速度)としてのG相当(重力加速度=9.8m/秒の2乗)を単位として用いる方式を採用しました。 同じ加速度ですから宇宙の定理では正しいことになります。 これにより、錘を使用し、魚がかかった際に、ロッドをどのようにしゃくると、どう曲がるか、が計算できます。 即ち、G=1で計算すると静止ロッドモデルとなり、G>1を使用すると動的ロッドモデルとなるようにしているわけです。

Boat Rodにおける加速度は常に垂直方向ですから、1G相当の時、つまり、持ったままの場合は、重力と同じになりますし、ロッドを上方に煽る場合には、それなりのG値にて加速度計算が出来ます。

ロッド各部に4を掛ける意味

ロッドの各部品に4を掛けてモーメント計算をする、「意味」について考えてみましょう。 或る人は、これは架空のモデルであると言います。果たしてそうなのでしょうか。 やってみましょう。

ここでは、水平に保持されたロッドを想定します。 ロッドは静止しています。

今、ロッド全体(ブランクおよびロッド部品)の質量に対して、g=1G の引力(重力加速度)が働いています。

この状態では、W=mg、が成り立っています。 Wは、秤を使えば測定できるわけですね。  g=9.8m/秒^2 ですから、mも計算できます。

部品の重さに4を掛ける、と言う意味は、地上での重さ=Wですから、

W x 4 = m x g x 4 ということになります。 この式を次のように書き換えれば、どういう意味になるでしょう。

4W = m x 4g   (式1)

質量mの物体が、重力加速度の4倍の作用を受けていると言う意味になります。
つまり、これは4gの加速度を受けて、動いている物体の状態と同じ”意味”になるわけです。  

ロッドの全部品に4を掛けるわけですから、ロッド全体が4gを受ける速度で動いている動的モデルであるという、”意味”になります。  

いま、計算モデルからの推論をしました。 

では、逆に、実際に、水平状態で加速度、a = 4 x g(9.8m/秒^2) で上に並行移動するロッドの実際的モデルを考えてみましょう。

ロッド各部の受ける加速度は、 a=4g、ですから、ロッド各部の受ける慣性力は、
F=ma = m X 4g  です。 これは、上記の(式1)と同じです。

以上

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