竹の属性

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ブランクのモーメント計算、曲がりの計算に使うテーブルです。

竹は、その種類によって弾性や重さが違います。  

現在、フライロッドに主に利用されている竹は、トンキン竹です。  また、日本には色々な竹が生えており、これらを釣り竿に利用しない手はありません。

では、日本の竹を使って竿を作る場合、どのように設計すればよいのでしょう?

DynaRodは、そういった竹の種類によって異なる属性も把握して、釣り竿設計の判断資料を提供します。  
もちろん、竹以外の素材を使いたい場合、例えば、木や、グラスファイバー、カーボングラファイトなどの素材でも、このテーブルに設定しておけば、その属性情報に基づいて計算が行われます。

このテーブルに設定した竹種は、ロッド情報を入力する画面のコンボ(選択)ボックス内に表示され選択可能になります。

現在、筆者が調査した下記の竹の属性が設定されています。  自然の丸竹もそのまま釣り竿として設計対象にすることができます。

    トンキン竹
    破竹
    真竹
    矢竹(丸竹)
    スズ竹(高野竹丸竹)
    女竹
    貯水竹(中国の細い竹)
    唐竹(トーチク)

画面上の項目と意味

MOE(弾性係数)と竹の重さの計算機能   

対面巾を入力し、計算ボタンを押すと、その対面巾でのMOEと竹の重さが計算できます。

項目名 意味
竹の名前 出力項目。 竹の属性テーブルの左側にあるレコードセレクターを移動すると該当の竹の名前が自動的に表示されます。
MOE値 出力項目。 指定した対面巾に対するMOE値を表示します。
重さ 出力項目。 指定した対面巾に対する竹の重さを表示します。立方インチあたりの重さ。
対面巾 入力項目。 対面巾を入力します。
MOE、竹の重さは対面巾によって異なります。

竹の属性テーブル

項目名 意味
番号 テーブルレコードの番号
竹の名前 竹種につけたID、竹の名前をニックネームにしたもの
L値 竹の曲がりを計算する際に使用する曲調整係数。通常、6に設定。
数値が大きいほど曲がりやすくなる。
MOE係数 MOE(弾性係数)分布曲線のの係数部分(K)
MOE=K x log(対面巾) + C で計算
MOE定数 MOE(弾性係数)分布曲線の定数部分(C)
MOE=K x log(対面巾) + C で計算
重量係数 単位当たり重量曲線の係数部分(K)
Weight=K x log(対面巾) + C で計算
重量定数 単位当たり重量曲線の定数部分(C)
Weight=K x log(対面巾) + C で計算
備考 コメント

ハイブリッド・ロッドについて

竹の種類=”Hybrid”のレコードは、ロッドの基本情報を設定する際の便宜のためにいれてあります。 実際の竹の名前ではありません。

ハイブリッド・ロッドというのは、ロッドの各部分に異なる素材を使って作ったロッドです。 
中空にする場合も竹の種類=ハイブリッドで指定します。
たとえば、Tipセクションは真竹の六角断面、MidとButtセクションは丸矢竹を使うといった具合です。 DynaRodは、このように各セクションで異なる属性を持つロッドも設計可能です。

MOE(弾性係数)の調査方法:

下記のようなボードを作ります。 グレー:コンパネ 薄茶:木片 濃茶:サンプルブランク

測定したい竹を使って、対面巾が大中小の3種のサンプルブランクを作ります。
例: 大 7mm  中 4mm  小 1mm

長さは小、中は30cm程度、大は70cm程度、適宜調整してください。
固定台の端からサンプルブランク先端までが、長さ(L)となります。
(図では曲がった後の長さになっていますが、曲がる前の長さです。)

図のようにサンプルを固定し、適当な重さの錘(おもり)を先端にぶら下げます。
グレーのボードの上端から、サンプル先端が下がった深さ(y)を測定します。

錘の重さを2〜3種類取替え、測定結果を記録しておきます。 測定する対面巾、や長さ(L)を替えたりして、出来るだけ多くの測定結果を記録します。  測定結果の正確性を出すために、平均を取るためです。

大中小3種のサンプルについて上記の測定結果を記録します。 
Pは錘の重さ(オンス)、Lはサンプルの長さ(インチ)、yは下がった長さ(インチ)として記録します。  
対面巾も、インチ表示にて記録しておきます。

測定記録した結果を元に下記の公式を使ってMOE(弾性係数)を計算します。

y = PL^3 / 2EI  =>  E =PL^3/2yI で、E(MOE)が計算できます。  Eはしばしばヤング率といわれることもあります。  

I は断面2次モーメントといい定数です。サンプルブランクの断面形状の違いによって下記の式で計算します。

六角断面 ソリッド:   I=0.5413 x b^4  bは六角の1辺の長さ、 対面巾Dとの関係は、 b=D/√3 となります。

六角断面中空: I=0.5413 x (b1^4 − b2^4) b1は外側の、b2は穴の1辺の長さ

四角断面ソリッド: I=1/12 x h^4  hは四角の1辺の長さ(=対面巾)

四角断面中空:  I=1/12 x (h1^4 − h2^4)  h1は外側のh、h2は穴のh

丸断面ソリッド: I=π/64 x d^4  dは直径(=対面巾)

丸断面中空: I=π/64 x (d1^4 − d2^4)  d1は外側のd、d2は穴のd

次に、上記で求めたMOEと対面巾を、エクセルにて2つの列に記録します。

エクセルのグラフ機能を使って、散布図グラフを作成します。 x軸の値は対面巾(インチ)、y軸の値は MOE yの値です。  グラフは測定した竹ごとに作成します。

次に、エクセルグラフのデータ系列(グラフ上に表示される曲線)の上をマウスの右ボタンでクリックし、ポップアップウィンド内の「近似曲線の追加」、を選択します。  

近似曲線の追加ポップアップウィンドが出ますので、「種類」のタグで、「対数近似」をクリックします。 

オプションタグでは、「切片」のチェックボックスはオフ、「グラフに数式を表示する」のチェックボックスをオンにします。

グラフ上に右下がりの対数近似曲線が表示され、対応した対数一次式が表示されます。 一次式の係数が MOE K となり、 定数が MOE Cとなります。 これらの値を、竹の属性テーブルに設定するわけです。

竹の単位当たり重量、についても同様にして、1 cubic inch(立法インチ)あたりの竹の重さをオンス単位で記録し、対面巾ごとの値をエクセルに記録します。 MOEと同じやり方で、対数近似式を入手します。 Weight Kに 対数近似式の 係数を、 Weight Cに対数近似式の 定数を、テーブルに設定します。 

以下に、実測結果の対数近似曲線を掲げておきます。

MOE (Modulus of Elasticity)

 

L値(曲調整係数)の計算法

下記の計算により得たMOEや、竹重量を代表値として使用するのですが、
これらの値はあくまで平均値であり、竹の固体ごとに数値は異なります。 
そこで、これらの値を検証するための実験を行い、L値を計算します。
上記との違いは、テストピースではなく、実際に組み上げたロッドを使う点です。  
つまり、プログラム上、どんな数値を使ったとしても、実際に出来上がるロッドが計算結果に近くなる、
というようにするわけです。

対面巾の分かっている実ロッドをグリップ先端で水平に固定する。 
丁度、上記実験のボード図と同じようにロッドを水平に固定します。
重さの分かっている錘をトップガイドにぶら下げます。
トップガイドが下がる長さを実測します。

次に、同ロッドのテーパーをDynaRodに記録します。

曲り・ストレス計算(E)機能にて曲りを計算します。
竿種=Boat Rod(船竿)を選択します。
上記測定で使ったと同じ錘の重さを錘フィールド(またはフライの重さフィールド)に入力します。
計算ボタンで計算します。
計算完了後、各種グラフ頁に切り替え、Excel/Zoomボタンを押します。
ワークシート名、Stress Data を開き、計算上の先端下がり長を入手します。
数値は、同シートの行12、列14 (Tiptopのx軸の位置。 数値は縦の曲り図に対応しているため))がこれに該当します。
数値の単位をあわせ、実測と計算を比較し、L値を当テーブル上で調整します。
再度、計算を繰り返し、計算結果が実測と近似となるようにL値を決めます。

 

体積当り竹重量

以上

 
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