DynaRodユーザーガイド

DynaRodユーザーガイド 始めに DynaRod使用法 トラブル・シューティング 目次

テーパー・アーカイブ & メニュー

 

DynaRodの概要


ロッド設計の基本思想

DynaRodは、ロッドの曲りとアクションを中心にしたロッド設計ソフトです。 ロッドの曲り、と、アクション、を設計することによって期待するロッドのテーパーを得る、という設計方法です。 

テーパーのみならず使いやすいロッドを設計するためのいろいろな要素、たとえば、実ストレスの動的な移動、ロッドの動的な曲り、ロッドのバランス、使用すべきリールの重さ、部品の配置、PF設定の方法、等々、ロッド設計に必要な機能も取り入れています。  

ロッド設計者・製作者とロッド使用者(Fly Fisher)との間の意思疎通を容易にする、ということも念頭に於いて開発しております。  たとえば、DynaRodの画面を見ながら、ロッド使用者の要求を明確にしていく、というような使い方もできます。

ロッド角、Tip先端角という新しい考え方を導入し、これまでのFast、Medium、Slowのロッド・アクション定義にも挑戦しています。

DynaRodの特徴

動的計算

DynaRodはその名の通り、ロッドの曲りについての計算をDynamic(動的)に行います。  静止ロッド(静止しているロッド)モデルに動的計算があるのか?という問いに関しては、YESです。  ロッドの先端に錘(おもり)をぶら下げた場合を想定してください。  ロッドは次第に曲がっていき、あるところでバランスします。  この間のロッドの曲り方の計算を動的に行います。  「動的に計算する」、というのは、一瞬前の曲がったロッドの状態を前提に負荷を計算し一瞬後のロッドの曲りを計算する。  これをロッドがバランス状態になるまで続けるという意味です。

動的ロッド(動いているロッド)モデルの場合は、ロッド自体が動いていることが前提となります。  つまり、ロッドが一定時間内に、一定の距離を、一定の方向に動いた場合に、ロッドが受ける負荷を計算し、結果としての曲りを、やはり動的に計算します。   では、どうやって動きを表現、把握するのか、というと、ユーザーはDynaRodを使ってロッドの動きを設計することができます。  これを、キャスティングの設計と言います。  キャスティングを設計できれば、自然とロッドの動き(方向、速さ、時間)が計算できることになります。

動的な計算においては、時間を幾つかの連続した区間に分け、その区間区間でのロッドの動きを逐次計算していきますので、多少計算時間がかかります。  この結果、DynaRodが表現する曲りは、自然界で実際にロッドに錘をぶら下げたり、実際にロッドをキャスティングしたりした時の動きに非常に近くなります。

テーブル主導

DynaRodは、ユーザーがテーブルで指定した情報によって計算を行う方式を多方面に導入しています。  

常に同じ条件で計算するのではなく、ユーザーが計算条件を変えたい場合には、テーブルや、入力画面にて条件を設定すれば、それに従った計算を行います。  

一例を挙げると、ユーザーは竹種テーブルで自分がロッドに使う竹の種類を設定できます。  竹種テーブルを設定すると、ロッド仕様を入力する際に、竹種を選択することができます。  竹種を設定されたロッドは、曲がりの特性であるMOE(弾性係数)や単位当たり重量などを自動的に竹種テーブルから読み取って計算を行います。

トンキン竹で出来ているロッドを、真竹に変更したら、どういう結果になるか、といった実験的な計算も、画面上で使用する竹種を変更して計算ボタンを押すと即座に計算し、グラフ表示することができます。

トップガイド、スネークガイド、フェルールなどのサイズはテーパーから自動的に選択し、各テーブルからその重さ、長さなどを取得します。

DynaRodは基本的に、Flyロッドの設計を中心に置いてはいますが、ガイドに関する以下のテーブルに、必要なガイドセットを入力することで、ルアー・ロッド、ボート・ロッド(船つり用ロッド)等の設計も同様にできるようになっています。 初期値はすべてFlyロッドの属性になっていますので、ルアー・ロッド、ボート・ロッドを設計する際は、適宜設定してください。

*ガイド属性・テーブル
*トップガイド属性・テーブル
*ユーザーのガイドサイズ既定値・テーブル

設定できるその他のテーブルについては、テーブル設定メニューを参照してください。  全てのテーブルは、ユーザーが自由に変更できるようになっています。

メートル法とポンド・ヤード法のDual表示機能

DynaRodは内部的にはポンド・ヤード法にてデータを維持しています。  日本やヨーロッパ諸国では、メートル法が採用されていますので、画面表示、PF設定出力では、表示単位をボタンひとつで切り替えることができます。  ただし、グラフデータに関しては、内部データに基づいて作図しますので、一部を除き、インチやオンスなどのポンド・ヤード法の単位で表示されています。 

ロッド作成では、ほとんどのテーパーがインチ表示であることから、特に不便はないものと考えます。

Garrisonストレス・カーブとの違い

Static(静的)ロッドモデルに関してStatic(静的)計算を行うGarrison計算式によるストレス・カーブは長い間、ロッドメーカーにとってロッド設計の道具として愛用されてきましたが、以下のような指摘を受けることも多々ありました。

ロッドが実際には大きく曲がっているのに先端部のストレスが高いのは不自然である。 
Tip先端部は伸びきっているのでストレスは逆に低くなるはずである。    

DynaRodの作成するストレス・カーブは、動的な計算によりストレスを計算しますから、描かれたストレス・カーブが実際のロッドの曲りを反映することになります。 このためGarrison式ストレスカーブとは似てはいますが異なります。

DynaRodのストレス・カーブの旧来との違いは、

Tip先端部が異常に高くはならない
Tip先端部のストレスはロッドが大きく曲がるとリリースされる
Tip先端部のストレスはロッド負荷が大きくなるほど下がる
リリースされたストレスは、順次、Butt側に伝えられるので負荷が大きくなるほどMid、Butt側のストレスが相対的に高くなる。 このストレスの動きがロッド設計では重要なのです。

この結果、DynaRodのストレス・カーブは、ロッド設計における目標という位置付けよりは、一定の負荷のもとでの結果としての実際的なストレスの分布をあらわすグラフ、と言う位置付けになります。 動的ストレスカーブに慣れましたら、これをもとにテーパーを設計するということも可能にしてあります。 (ストレス・カーブによる設計)

新たな設計目標の確立

ストレス・カーブを設計目標としていたGarrisonの計算式は、スクラッチから全く新しいロッドテーパーを設計する、というよりは、既存のテーパーの修正に使用されるケースが圧倒的でした。 2ピースのロッドを3ピースに、4番手のロッドを5番用に変更する、といった具合です。 また、DynaRodによる動的な計算が、設計目標であったストレス・カーブの位置付けを本来のストレス分布図に変更したことで、ロッド設計の目標を何に求めるかという命題が生まれます。 

DynaRodでは、ロッドの曲り、即ち、ロッド・デフレクションとアクション・ゲノムという新たな設計目標を確立するのに成功しています。  ゲノムというのは、遺伝情報という意味です。 ロッド・アクションには一定のパターンがあり、ゲノムのパターンを導入することで、アクションのパターンをロッドに転写できるということを暗示しています。 ロッドアクションは、そういう意味で、あたかも遺伝子のようです。

ロッド・デフレクションとアクション・ゲノムの定義

ロッド・デフレクションとは、全体的なロッドの曲り形状、曲り角度、曲がりの深さを言います。 

アクション・ゲノムとは、ロッド各部の曲がり方のタイプをいいます。 

都合の良いことに、アクション・ゲノムは旧来のストレス・カーブと同様の傾向をもち、かつ、ロッド・デフレクションとの間に物理的な関係を常に維持している、という特性を持ちます。 このことは、「ロッドを設計する」ということを実際的、かつ、可視的に行えるということを可能にしました。

ロッド・デフレクションとアクション・ゲノムの物理的な関係は、「曲がりで設計」機能にある、Deflection Designerというエクセル・ファイルを実行していただくと良く分かります。 エクセル・ファイル内に使い方の説明があります。 エクセル単独でも稼働可能ですので、別途お試しいただけると理解が早まるものと思います。  DynaRodのダウンロード・パッケージ内に格納されています。

DynaRodは、ロッド・デフレクションとアクション・ゲノムの採用によって、”スクラッチ(存在しない状態)からロッドを設計する”、ということを可能にしました。  これまでクラシック・テーパーからの変換しか考えられないと信じていたロッド・メーカーも、”ありとあらゆる” ロッド・テーパーが存在することを実感でき、自信を持てるものと確信します。

システム概要

DynaRodは、Microsoft Access、Visual Basic for Application (VBA)、および、Excel を使用して開発されています。  Accessのデータベース機能、VBAの処理機能、および、Excelのグラフ作成機能、を機能的に統合したシステムです。 Access画面によるユーザーインターフェースを介してユーザーがDynaRodと会話する形で使用します。 

DynaRodの出力は、一部グラフ出力を除き、ロッド毎にExcelファイルを作成し、その中に結果を保持します。  DynaRodを閉じた後でも、Excelを使用して内容を利用することもできます。  DynaRodは独自に印刷機能を開発していません。  印刷が必要な場合は、Excelファイルを開いてユーザーが自在に印刷設定することができます。  また、Excel 内の計算結果をさらにExcelの機能を使用して別の計算をすることなども可能になります。 

互換性

Access 2000形式のデータベースは、Windows 2000、または、Windows XPの元で、Access 2002, 2003、2007でも使用できます。  Access 2003は、データベース形式が2000と2003の2種を使用できますが、データベースの形式を2003形式に変換した場合はDynaRodはAccess2000の元では稼働できません。  VBAコードが2000形式を前提にかかれているためです。  Excel自体には上位互換性がありますから、DynaRodの出力ファイルは、Excel 2000、,2002、2003いずれでもみることが出来ます。

Windows Vista、Aceess2007、Excel2007の元でもDynaRodの正常稼動が報告されています。

DynaRod Package 梱包内容

DynaRodのダウンロードパッケージには下記のものが含まれます。 いずれが欠けてもDynaRodは正常に稼働しません。 いづれも消さないようにご注意ください。

DynaRodvnn.mde    DynaRodプログラム、nnはバージョンコード。
SetUpvnn.mde         ライセンス適用プログラム  
DeflectionDesigner.xls      デフレクション・デザイナー エクセル・プログラム
StressCurveDrawer.xls     ストレス・カーブ描画 エクセル・プログラム
Master.xls                       静止ロッド用出力マスター
MasterDyna.xls                動的ロッド用出力マスター
HelpJ                     DynaRodユーザー・ガイド、兼、Helpファイル

ライセンスの適用

DynaRodのは、ライセンス(使用許諾)取得により使用していただきます。
ライセンスをDynaRodに適用する方法は、まず、DynaRodのホームページから必要なライセンスを入手します。  

お試し版ライセンスの入手

DynaRodのパッケージをホームページからダウンロードし解凍した後、梱包されているSetUpvnn.mdeを実行すると自動的にホームページに接続され、お試し版ライセンスをダウンロードし、セットアップすることができます。

ディレクトリー・システム

DynaRodのホームディレクトリーは下記のようになります。
下記の例では、ユーザーのMy Document中にDynaRodホームディレクトリーを置いた場合を想定しています。  ダウンロードパッケージを ¥My Documentの下に導入すると下記のようになります。

¥My Document
    |
    |
    +- ¥DynaRodvnn       (ホームディレクトリ)
        |
        +- ¥data                         (データフォルダー Excel出力を格納)
       |
        +- ¥DBbackup                  (エクスポート・インポート フォルダー)
       |
        +- ¥helpJ                        (ユーザーガイド フォルー)              |
        +- ¥tap                           (CNCビベラ-制御ファイル出力)

  

以上

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